なんで雨が降るのか?が大事
昨日の夕方,関東南部は結構晴れていました.実況で晴れていましたが,モデルでは夜のはじめ頃から雨が計算されていたんです.
空を見上げればしっかり晴れているもんですから,この後,少ししたら雨が降り出すなんて信じられないかも知れません.でもそこは気象予報士なら,一緒になって不思議がってるだけではなく,「信じられないかも知れませんが,降るんですよ!実は,こうなっているので雨が降るんですよ」って,ちゃんと解説できなければならないところです.
13日00Zの予想天気図によると,上空は西南西流場から南西流場へ移行しつつあり,地上では高気圧の中心が14日朝にかけて次第に東海上に遠ざかる予想になっています.関東地方には高気圧後面を回る南寄りの風が入り,14日朝までの12時間に降水が予想されています.
高気圧後面の流れは上空でも明瞭で,850hPaでは(右)等温線が北へ盛り上がり,南寄りの風が高気圧性の曲率を持って流れ込むのが分かります.そして,その流れに沿って700hPa(左)では湿り域が予想され,鉛直P速度(右)も-20hPa/hの極値が計算されています.なるほど,これで降水が予想されているのか.
850hPaの相当温位の予想では,高気圧後面流がさらに分かり易く現れています.相当温位は315Kあたりで集中帯を形成し,南海上から315K以上の相当温位の空気塊が25ノットから30ノットで関東地方に鋭く突っ込む形になっています.これで,700hPaまで湿り域が予想されているわけですから,これで雨が降るということが分かり,しかも小雨でもないことが分かります.
GSMでここまで予想されていますから,その後はMSMなどより細かいモデルで地域を絞って,検討していきます.その時,モデルと実況のズレがどうなっているのかも把握して,予想を出していかなければなりません.
予報を受け取る側にとって,雨の有無だけではなく,その雨がいつから降って,いつ止むのか?という情報も必要としています.その時,予報を出す側は「モデルで計算されているから」だけでは不十分で,それではちゃんとした予報を出すことができません.
なぜなら,雨が降る予想になっている要因が分からなければ,モデルと実況のズレを理解することもできませんし,引いては雨の降り出しの時間も降り方も止む時間も予想できないからです.
モデル通りに予想を出すなら,モデルの見方だけ教えれば気象予報士じゃなくたって天気予報はできてしまうんです.予報士ってそんなもんじゃないですよね?