大雪の復習

日本海側の大雪が話題になっています.まだ冬の入り口ですから,この雪を振り返っておけば,次に同じようなパターンになった時に,比較してみたりするとオモシロイかも知れません.私は,新潟がご贔屓なので5日から6日中心に見て行きます.

<6日の未明頃のライブカメラにテンション上がる!>

今回はなんといってもJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)で平野部に降る形です.シベリアの寒気が吹き出す冬型でも,よどみなく北西風が吹きつけて新潟市内に入ってくれば,それは新潟にとっては海からの暖かい風ですから,雪にはなりません.山沿いに大雪をもたらします.しかし,JPCZなら強い寒気が吹き出しても収束して,収束線の位置によってですが,新潟に強い西~北西風は吹きません.弱い風とか,少し南成分が入るような,そんな風です.ですから,海からの風で気温が下がらない,もしくは上がっちゃうなんてことはありません.そこに,JPCZの発達した雲域が入ってくるのです.降れば,降水量多そうでしょ?実際多いです.下の図は6日の18時までの24時間積算降水量の解析図です.日本海側が多いっていうことではなく,もう少し細かく見ると,北陸地方で多くないですか?山陰のほうまで多いけど,この時間はまだ沿岸すれすれで陸地にかかってないみたいです.

MSM_14_1206_18006日18時までの24時間積算降水量の解析.

寒気が強いから大雪になった,海面水温が高いから大雪になった,寒気と海面水温の差が大きいから大雪になった,などいろいろ言われていますが…では実際にいろいろ資料を見てみます.

MSM_14_1206_0900kanki6日9時500hPaの気温(MSM予想図)

MSMの初期時刻から3時間後の予想図ですが,実況と同じような感じでしたので,こちらを見てみます.北海道の北には-46℃という寒気の核があります.そして,この辺りは大体-42~-45℃という,確かに強烈な寒気です.北陸沿岸で見ても,-39℃,-40℃という値が見られ,500hPaの寒気は平年と比べると15℃位低い日本付近ということになっています.

sstD_20141205sstD_anm_20141206

次に海面水温の分布と平年偏差図を見てみます.この時期の北陸沿岸はまだまだ平年でも水温は高めで,今回は平年よりも1度位高い状況らしいです.北海道の沿岸部では逆に平年より1℃位低めですね.それで上空の温度と比較すると…日本海側は一様に50度以上の差です.しかし,上空と下層の温度差を取るのに海面水温はあまり参考になりません.安定度に影響はしてるでしょうけど,それはあくまでも下層の気温ですね.下層の気温と上空の気温差というふうに見ます.海面水温が重要なのは,上空の温度に対してではなく,下層の寒気の吹き出しに対して,です.

MSM_14_1206_09006日9時 850hPa気温・風(MSM)

850hPaの温度で見ると,輪島付近に-9℃線がかかろうとしています.この時期のこの高度,この辺の平年値は-2℃位ですから,これは強い寒気ですね.そして,案外重要なのは,大陸のほうの出元の寒気が―24℃っていうすっごい強い寒気があるということです.ただ-9℃の強い寒気というだけでなく,その背後にもっと強い寒気があって寒気移流が続くという状況が,暖かい海面水温に対して重要です.この低い高度の温度差は,空気のほうに水蒸気をどれだけ渡せちゃうかということに関わってきます.温度差が大きいから対流が活発,活発だから温泉みたいな日本海上だから,大気に水蒸気がたくさん移る,それは大陸から吹き出す乾燥・寒気が下層からどれだけ分厚い,しっかりとした湿潤層を作れるか,ということにつながります.水蒸気の量が多ければ,それだけ多い降水量につながります.

MSM_14_1206_09009256日9時 925hPa風(MSM)

寒気が吹き出して,下層に水蒸気が移り気団変質が進んで,湿潤層が分厚くなっていく,そのためにもう一つ重要なのは,寒気が海上を吹き渡る距離です.上の図を見て分かる通り,北陸沿岸と北海道の西の海上では吹走距離が全然ちがいます.風向にもよりますが,北西~西の風が吹く時は,このような差が出てくるのです.北海道の西部のほうが下層の寒気も強い,上空の寒気も強い,大雪の条件は北陸よりも整っているように感じられますが,吹走距離が違うことで下層の水蒸気の補給が全然変わってくるのです.この水蒸気量の差が降水量の差に直結するところです.ただ,気温が高い・低いで雪水比も考えなければなりませんので,降雪量は単純には出せませんが…

今回はそこに,上空の寒気があるということです.寒気の中心が日本海側にあることが,JPCZができやすい場でもあるのですが.単なる冬型では対流が立つ高度が低く済んでたというのに,上空に寒気があるばっかりに収束線上で暖かく湿った空気が背高く上昇できる,積乱雲が発達できるということです.これが,平野部に大雪をもたらす構造です.

まだ冬の入り口ですから,この冬何度も同じようなパターンに出くわすかも知れません.その都度,いろいろな条件を比較してみるといいですね.

2014年12月9日~天気はコロコロ変わる~   合同会社てんコロ.
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