気象予報士の資格に興味がある、勉強を始めたばかりの方へ

2024年8月25日に開催された第62回気象予報士試験
その公式解答が、先日発表されました。
https://www.jmbsc.or.jp/jp/examination/examination-7.html

◇試験はまず一般・専門知識が問われる学科分野から採点されます。

▶一般知識は、熱力学や降水、大気の運動など学生の頃に理科や物理で勉強したような内容です。
▶専門分野は、気象観測の方法、天気予報の作成手法、注意報・警報などを学ぶ内容で、気象予報士だからこそ
身につけなければならない、気象予報士試験の醍醐味の一つだと思います。

◇一般に「気象予報士」と聞くと、テレビなどメディアで天気予報を伝える人という印象がまだ強いようですが、
それは気象予報士の仕事としては氷山の一角です。

例えば、交通機関・道路・自治体・レジャー施設・各種イベントなど、
天気予報・気象情報は、ありとあらゆる業種や職種と切っても切れない関係にあります。
そのため、各種企業や団体向けにさまざまな気象情報を提供したり、コンサルティングをしたりする仕事もあります。

◇【気象予報士】は国家資格で、この資格を持っている人しか現象の予想をすることができない「業務独占資格」です。
つまり、この資格を持っていること自体が強みなのです。
今ある仕事の中でも自分にしかできないことがあり、今は存在しない仕事でも、
他の人にはできないこの資格を用いた新たなビジネスを創出することもできます。
気象予報士にはさまざまなチャンスがあるということです。

◇第62回気象予報士試験の一般分野の問題を覗きながら、どんな勉強が必要なのかを見てみましょう。
試験問題は、こちらからダウンロードして利用することができます(公式解答と同じ)。
https://www.jmbsc.or.jp/jp/examination/examination-7.html

 

問1『地球大気の鉛直構造』
私たちが扱う気象は地球の大気の中で起こっていることなので、気象予報士試験の勉強では
いちばん最初に学ぶところです。地上では普通、極域よりも赤道域のほうが暑いですよね。でも、高度15kmくらいまで上がると
逆になるんです。そのようになる理由など、地上から上空にかけての大気の縦方向の構造を学びます。

問2『鉛直方向に運動する空気塊』
空気には境目などありません。しかし、気象では周りの大気より温度の高い・密度の小さい「空気の塊(空気塊)」が上下に動くのを、
まるで風船が大気中を移動するかのように考える必要があります。
例えば、当たり前のように空にぷかぷか浮かぶ「わた雲(積雲)」は、まさに周りの大気よりも密度の小さくなった空気塊が空に浮かび上がった結果として
できた雲なのです。この問題では、そんな空気塊の動きを考えます。ポイントは、周りの気温(気温減率)とその大気の中を移動する空気塊の温度変化です。

(↑積雲。ポコポコと雲が浮かんでいるところに、「熱対流」があります。熱対流も一般分野で勉強します)

問5『太陽放射と地球放射』
一般分野の勉強を進めると、ここで「なぜ放射の勉強が天気予報に必要なのか」と疑問に思う方が多いのですがすぐに必須であることを理解します。
地球がどのように温まっているのか、なぜ大気の温度はほぼ一定なのか…つまり「気温」を考える上で最も重要なのです。
今回は、グラフの読み方がわかれば難しくはない、とても基本的な問題が出題されました。

問6『気温の時間変化率』
一般分野でもない、数学の知識だけで解ける問題です。実は、専門分野で勉強する数値予報モデルの中身の話であり、
気温変化をどのように計算しているかを知るために重要な「温度移流」の問題です。そういう意味では、専門分野だけでなく実技分野、
そして気象予報士の資格を取得した後も覚えておかなければならない考えです。案外、単純なしくみで驚くかもしれません。

 

(↑積乱雲。夏の空に現れました。頭が平らになっている「かなとこ雲」が見え、限界まで発達した状態です)

問9『日本の夏に現れる積乱雲』
積乱雲は「雷雲」という別名を持つ、その名の通り唯一雷をもたらす雲です。積乱雲が発達するためには、空気塊が上昇して「持ち上げ凝結高度」に達し
雲が発生したらさらに上昇を続け「自由対流高度」を突破する必要があります。
ちなみに、この問題は「夏に現れる」とわざわざ指定しているところも面白いです。指定しなくても差し支えはないですが、
冬季、日本海側に雪をもたらす雲も主に積乱雲です。それは除いて考えてほしい、ということで言及したのでしょう。
選択肢の文章にある「局地的な高気圧が形成される」という部分が冬季の日本海側の積乱雲では現れにくいからかもしれません。

という具合で、一般分野の試験の一部を紹介しました。

いかがでしょうか?「全くわからない」「手が出せそうにないな」というほど難しくもなさそうじゃないですか?
気象って意外と身近だったり、日々の生活に近いところに有ったりするのです。
日常生活の中で、「これは気象で説明できるのかな」などと疑問に思ったら、ぜひ勉強をはじめてみませんか?

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2024年9月22日~天気はコロコロ変わる~   合同会社てんコロ.
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