この時期は台風と前線のコラボに注意
てんコロ.の気象予報士講座は、学科専門の作成も佳境を迎えております(一般分野は公開済み)!本日もパンダスタジオにて、せっせせっせと収録です。
さて、みなさんもご存じの通り、現在台風4号が沖縄の南の海上を北上中で、どうやら四国あたりに上陸しそうだぞ…というコースをたどっています。おとといぐらいまでは、本州の南岸を通るコースでギリギリ上陸しないかな~ぐらいだったのですが。まあ、こんな風に計算自体も日々変わっていくわけです(・o・)。ですから、最新の情報を取る必要があるわけです。
台風の構造は、暖湿気のかたまりです。それを数字上で見るのは、850hPaの相当温位が一番手っ取り早いですね。今日は、着色してある850hPaの相当温位と流線を見ていただきます。これはメソモデルの予想で、今夜21時の状態を表しています。
台風の中心から、まるく高相当温位のエリア(赤線・ピンクの網かけ域)があるのが分かります。このエリアは相当温位345K以上の、高相当温位域です。非常に暖かく湿っているということです。台風の北上とともに、この暖湿気も連れてくるわけですが、この時期は日本の南海上に梅雨前線が横たわっているのがしばしばです。今回も、速報天気図を見ての通りです。そして、850hPaの図の方に戻り…今夜には紫の線で表した辺りに前線が停滞する予想です。
この時期は、台風の直接の影響よりも特に気を付けたいのが、この前線とのコラボです。前線はそもそも空気の境目で、不安定なところです。そこへ、このような形で暖湿気が突っ込んでくる形になると、前線は刺激されて活発化します。そして、特に東~南東風が吹きつけるような斜面では、強制上昇による地形性の降水も加わって非常に降水量が多くなる場合があり、警戒が必要なのです。
昨年、奈良県で「土砂ダム」を作ってしまった大雨をもたらした台風を覚えていますか?台風12号の影響で、奈良県上北山では72時間で1652.5ミリを観測しました。東京の、年間の降水量の平年値が1500ミリぐらいのもんですよ。いかにこの記録がすさまじいものか、分かると思います。この時は前線はありませんでしたが、大型の台風で、しかも動きが遅かったために、先ほど言った「暖湿気が南東斜面へ吹きつける」状態が長期間に渡って続いたことが主な原因でした。
台風絡みの問題では、暖湿気の斜面への吹きつけ、前線とのコラボに関してはよく出題されます。実際の事例も見て、どんな時に危険なのかを気象災害と合わせてよく勉強しておくといいですね。
台風というのは上陸するしないに関わらず、むしろ台風の中心が遠く離れている時から、警戒しなければならないことが多くあります。しかし、だからと言ってなんでもかんでも警戒する必要はありません。ムダに不安を煽るだけです。どんな影響があるのか?熟考して、注意喚起しなければなりませんね。ただマニュアル通りに、前線がある所に台風がくるから危ない…では、気象予報士として全く意味がありません。前線と台風が両方ある時だって、日本にほとんど影響がないことだってあるのですから。
2012年6月18日
カテゴリー:天気の話題