「大気の状態が不安定」というのは…
ゴールデンウィークあたりから、「大気の状態が不安定」ばなしで盛り上がってるね~。もう、日本中が大気の不安定状態について精通している状態。
テレビでたくさんやってますしね。
きっと、「上空に強い寒気がやってくる」から不安定なんだ!って、みんな知ってますね。
中には、上空5500m付近の温度と地上気温の差が大きいと(-35℃以上)、
非常に不安定で危ない!って知ってる人もいますね。
確かにそうなんですけど、安定なのか?不安定なのか?っていうのは、それだけじゃないのですね。
上空の気温とか、地上と上空の気温差だけで決まってるわけではありません。
上空500hPa(高度・気温・渦度)
一つの指標としてSSI(ショーワルターの安定指数)というものを紹介します。
SSIは、空気塊の昇りやすさの目安です。
下層にある空気の塊が仮に上昇した場合に、
その空気塊が昇りやすい大気なのか?昇りにくい大気なのか?
を示す目安です。
昇りやすかったら、雲が鉛直方向に発達しやすい、という目安になります。。。
エマグラムを使って調べてみよう!
850hPaの空気を、500hPaまで上昇させてみます。
上昇させた時の空気塊の温度を(Tr)、500hPaの気温つまり空気塊の回りの気温を(T)
として、
T-Tr<0(0より小さい)時は不安定、
T-Tr>0(0より大きい)時は安定
と考えます。ちなみに、SSIが+でも+3ぐらいまでは上昇気流が結構強ければ、
対流性の雨は降るぜ!という感じです。
6日(竜巻の日)、9日、10日データは、以下の通りです。
5月6日
*850hPa気温:12.4度
*850hPa露点温度:4.4度
*500hPa気温(T):-19.1度
5月9日
*850hPa気温:11.6度
*850hPa露点温度:1.6度
*500hPa気温(T):-17.7度
5月10日
*850hPa気温:7.0度
*850hPa露点温度:-2.0度
*500hPa気温(T):-20.3度
まっさらなエマグラムはネット上に落っこちてます。それ、使ってみてね。
ちなみに、こたえは
5月6日はSSI=-2ぐらい
5月9日はSSI=+2ぐらい
5月10日はSSI=+5ぐらい
になります。。。SSIの方面から言うと、昨日10日の不安定騒ぎは…
一概に「不安定」と決めつけられない状況です。
竜巻の日は、-2で確かに不安定でした。
さらに、850hPaの流れを相当温位(暖かさ・湿り)とともに見てみると…
<6日9時>
<9日9時>
<10日9時>
赤実線は相当温位315Kで、ピンクで色塗りしてある部分は相当温位315K以上のエリアです。
6日、9日は南海上から315K以上の暖湿気が入ってきている状況でした。
大して大きい値ではないけど、上空の寒気に対して、下層に暖湿な空気が補給されるシステムがあり
対流雲が発達しやすい場であったと考えられます。
ところが、昨日10日は流れが全く違います。
下層に暖湿気が…入っているどころか、北寄りの風で、空気は乾いているほう…。
ということで、昨日の大気の状態が不安定!というのは条件として気温しか揃っていなかった
…んだと考えます。逆に言うと、気温しか条件が揃ってなかったから、あの程度で済んだ。。。のだろう。
つまり、昨日の状態は前日の資料からも6日より悪い状態だ!…とは言いきれない
感じだったということです。
もし、昨日の上空寒気が来ていた所に、6日のような下層で暖湿気がどんどん補給される
仕組みが重なったとしたら…ホントにヤバイことになってたかも知れませんが…。
特に、安定か不安定か?ということと竜巻の発生に関しては、
不安定=竜巻に直結するものではありませんので。。。
2012年5月11日
カテゴリー:天気の話題